神戸放送(現:ラジオ関西)本放送最初の音楽は?
ラジオ関西の前身である「ラジオ神戸(JOCR)」が開局し、本放送を開始したのは1952年4月1日。周波数1490KC 神戸須磨から1KWの電波であった。ラジオ関西50年史37ページには当時の様子を次のように記載している。「午前6時57分、ラジオからロッシーニ作曲・交響楽「ガザラドラ序曲」のメロディが流れ、7時の時報に続いて皆川儀太郎アナウンサーが「JOCR、JOCRこちらはラジオ神戸であります。昭和27年4月1日火曜日午前7時、ただいまから初放送を行います」と開局第一声を電波に乗せた。この後「君が代」演奏に続いて、田中寛次社長が(中略)という開局の挨拶をした。と記載されている。
JOCRというコールサインは、民間放送はJOAR(名古屋)、JOBR(京都)というように並ぶが、このことから単純にJOCRは日本3番目の開局という意味ではない。開局順位は10番目である。放送局は無線局であり、放送法のほか電波法令の規定が適用される。電波法令では、開局申請について、おおざっぱにいうと(1)開局申請書類提出で書類審査。周波数の割り当てが可能か、申請者の財政状況までも審査(2)予備免許が与えられ、周波数、空中線電力などが指定される。このとき呼出符号(コールサイン)も指定される。(3)予備免許された周波数・空中線電力で局舎・放送設備(送信機・アンテナ)を用意。指定された「工事落成の期限」までに電波を出せるようにしておかなければならない。(4)無線局(無線局の種類:放送局)の、「工事落成検査」を受ける。電力のオーバーパワーは勿論。電波の質を検査され、合格したものに「本免許」が与えられる。神戸放送は1952年3月に本免許を受けている(5)そして、サービス放送(試験放送)を経て本放送になるのだが、神戸放送の場合、「3月30日社屋竣工式と開局式を須磨の本社で行い、同日夜、新開地の松竹劇場でトニー谷の司会による前夜祭が行われ、その模様は収録され、翌3月31日のサービス放送の中で放送された」(ラジオ関西50年史36頁)という。
このように、予備免許の段階で「コールサイン」は指定されるのであるが、予備免許を受けたのが3番目かというと、実は民間放送ラジオの第一次予備免許は16局が同一日に受けており(昭和26年4月21日)「この16局は、日本で最初に免許を受けた」ともいえるのである。(この16局が日本民間放送連盟を設立しており、神戸放送は設立時会員である)
それでは、免許申請が早かったから3番目のCRになったかというと、そうでもないようだ。たとえば朝日放送などは昭和24年12月に申請しており、昭和25年9月には70社が申請しているようだ。(昭和25年12月29日神戸放送が申請書を再提出しているようだ。)このことからも、免許予定地区のうち、申請が殺到し、調整を必要とした「東京・大阪」を後回しにして「予備免許を決裁した」のではないかと私は想像している。そして、東京・大阪が調整できた時点で一斉に第一期予備免許を発行したのではと思う。
根拠はAR 名古屋:BR 京都:CR 神戸:(JODR 姫路を1次予備免許時保留・後日予備免許は与えられたが工事落成できず本免許与えられず)
ER 広島 FR:九州(福岡)というように第一期予備免許時点では、東京・大阪という大都市を除き、ある程度地理的な規則が見れるからである。
なお、神戸と広島が1KWで京都放送は0.5KW(500W)。福井放送0.05KW(50W)という時代であり、神戸の1KWが低電力という訳ではない。なお、予備免許を与えるということは、放送設備を完成させて電波法に合致する電波の質という技術的基準をクリアすれば免許されるということである。このことからも、当時には「県域放送」という概念はなく、姫路市営放送には予備免許まで与えられたということは特筆すべきことであり、また、予備免許は与えられなかったが兵庫県下では「西宮市」が市営放送を計画して開局申請もしていたようである。神戸放送の開局の時代には「姫路」や「西宮」と競うという事情があったことも明らかにしておきたいと思う。
なお、このあたりはインターネットでもさまざまな情報が流れている。何をもって開局というのかは難しい問題であるが、これを読んだ貴方も「ガザラドラ序曲」か「君が代」がラジオ神戸の本放送最初の音楽かは判断に迷うのではないかと思います。さらにインターネットを検索すればそれ以外の音楽であるという情報もいくつかあるようです。それぞれの根拠や引用先を示されるとそれなりの理由はあると思います。(たとえば試験放送も含め最初の音楽なのかも知れません。このあたりは非常に興味深いところです)
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